子どもを育む関西発のベンチャー企業 | Dekiroute[デキルート]
インタビュー

子どもを育む関西発のベンチャー企業


「安田式体育遊び指導法」と「安田式遊具」という、世界で2つと無い、独自の体育指導方法と教育用遊具を、全国の保育、幼児教育施設に届け、熱中できる体育遊びで子ども達を元気にしようと、単なる遊具の販売に留まらず、現場の先生の教育や研修まで手掛ける滋賀県大津市の企業、エール株式会社の代表取締役、吉川靜雄氏にお話しをお伺いしました。

yell_TOP_02
吉川 靜雄 氏

エール株式会社 代表取締役
1944年生まれ。立命館大学卒業後、オンワード樫山、日本生命に勤務。1972年27歳の時、幼児教育の会社「学習研究社」の滋賀代理店として独立。有限会社ヨシカワ商事を経て、1997年、安田式遊具販売の為に、エール株式会社を設立。現在、エール株式会社、および株式会社安田式体育遊び研究所の代表取締役を務め、公益財団法人外遊び体育遊具協会の理事長も兼任している。

 
 

矛盾のない仕事をして一生を終えたい、と思い、たどり着いた「幼児教育」の仕事

–御社の事業内容は?
全国の幼稚園、保育園、こども園や小学校などに向けて、安田式遊具という教育用遊具の提案、販売と体育指導員の派遣や研修会運営を行っています。

遊具をご購入いただいた際には納品するだけでなく、設置した遊具をより楽しく有効にお使いいただけるよう、その遊具を使った指導法を子ども達や先生方にお伝えする研修とセットにして、全国に直接納品する体制をとっています。

–会社を創業されたきっかけは?
昭和47年、27歳の誕生日を迎えた時に、縁あって学研の代理店として独立しました。当時生命保険会社で営業所長をしていて、給料もよかったのですが、「このままお金と出世を追い求める人生で本当にいいのだろうか」と自問自答した末のことでした。

営業という職業は好きでしたので、勉強すればするほど「自分の扱う商品に惚れ、好きになるような、そして社会の役に立つ、矛盾の無い商品を販売して一生を終えたい」という思いが募り、考え付いたのが子ども相手の幼児教育の仕事だったのです。

–創業当時の具体的な仕事内容は?
幼稚園、保育園などに、園内で必要なあらゆる商品を販売する仕事でした。絵本やクレヨン、ブロック等の教材教具や、園庭の遊具等を販売していました。しかし、ここでも同じ矛盾を感じてしまうんですね。どうしても、「この粘土よりも、もっと良い粘土があるのではないか」「この絵本よりも、もっと子どもが喜ぶ絵本があるのではないか」と思ってしまうのです。

–どうやって解決されましたか?
解決するには、メーカーの垣根を越えて商品を扱う必要がありました。教材の方は、文具店を開業して仕入先を増やしました。絵本の方は、書店を開業して、どの出版社の本も扱える様にしました。その後も、問題意識をもち、興味を持ったモノはとことん勉強し、「ほんまもん」を探しては、お客様にお届けしていました。

今扱っている「安田式遊具」や「安田式体育指導」の考案設計者である安田先生にお会いできたのも、そのこだわりのおかげだったと思います。

–安田先生との出会いのきっかけは?
ちょうどその頃、子どもの身体の変化が社会問題になっていました。「転んでも手が出ない」「足の土踏まずが未発達」「低体温」や「アレルギーの増加」など、子ども達を取り巻く環境が変化し、遊ぶための仲間や時間、遊び場が少なくなったことで生じた、子どもの発育問題に、世間の注目が集まっていました。

このままでは、日本の将来はどうなってしまうのだろうと憂えた私は、「子どもは遊びで育つもの、子ども達が熱中して遊べる遊具はないのだろうか?」と、国内外を問わず「ほんまもん」の遊具を探し始めたのです。

日本中、世界中の教育移設や公園を見学に行きました。見学した遊具のなかには、有名な教授やデザイナーが設計した遊具もあったのですが、そうした遊具は、最初は目新しさから子どもは遊びます。でも、数ヶ月後に見に行くと、子どもは飽きてしまい、ただの飾り物になっていました。

–なぜ子どもは飽きてしまうのでしょうか?
大人が選ぶ遊具は安全第一、デザイン重視の「公園用遊具」だったからです。

例えば車を購入する際には試乗して納得して買いますね。「買う人」と「運転する人」は同じです。同様に服なら試着、食べ物なら試食をして買いますが、遊具とは、「買う人」と「使う人」が完全に切り離されている珍しい商品だったのです。

「使う人=実際に遊ぶ子ども達」は試しに遊んでみることはなく、遊ばない大人が「買う」のです。そのため、「可愛い」「大きい」「立派」という基準に重きをおいて選んでしまい、「子どもが楽しんで熱中できるか」「成長に繋がるのか」という視点は抜け落ちてしまうのです。

メーカーもデザイナーも、子どもと普段遊んでいる教育者ではありませんから、デザイン重視になるのも仕方なかったのかもしれません。「子どもが外遊びをしたくなるような、「ほんまもん」の遊具は、この世に存在しないのかもしれない」と諦めかけたときに、知人の紹介で安田 祐治先生をご紹介いただいたのです。奇跡的なご縁でした。
 

 

本当に子どもの成長に繋がる遊具を目指してたどり着いた「安田式メソッド」

–安田先生とはどういった方でしょうか?
安田先生は、京都師範学校(現・京都教育大学)を卒業され、小学校の先生になられてから、校長時代も含め、引退後も長年に渡り「子どもを熱中させる体育遊び」の実践と研究をされた先生です。アスリート育成のような「訓練的な指導」ではなく、こどもが熱中出来る「体育遊び」「運動遊び」という概念を考案されました。

子どもを熱中させる「安田式体育遊び指導法」は、当時、教員を集めて勉強会を開けば普及できていたのですが、遊具はビジネスとして成立させなければ普及しません。指導法を効率的かつ効果的に実践できるように設計された「安田式遊具」でしたが、後継者もおらず、75歳の安田先生は、遊具の普及は半ばあきらめておられました。

安田先生から遊具の話を伺った私はすぐに、求めていた「ほんまもん」に出会えた!と直感しました。そして、「安田先生の遊具は世界に通用します。建物の設計師に設計料を払うように、作家や作曲者に著作権料を払うように、先生の考案設計された遊具に商品名と定価をつけ、考案設計料をお支払いしますので、私に販売させてください」とお願いしました。

約600もの遊具の設計図をいただき、遊具の提案販売を始めるために、平成7年「エール株式会社」を設立したのです。

–「安田式メソッド」の具体的な内容は?
「熱中すれば自ら育つ」「小さな怪我をして、大きな怪我を防ぐ」「技能向上第一ではない、楽しい運動遊びが心と身体をたくましく育む」という考え方のもとに、誰もが運動遊びを大好きになる指導法と、それを効率的かつ効果的に実践するために生まれた遊具の両輪で成り立つ体育遊びです。

例えば、5歳児に逆上がりを指導しようとすると、大抵の場合、子供の身体の育ちに合わないテクニックやメンタルのサポートに回ってしまいます。しかし、「逆上がりが出来ない」=「やり方を知らない」のではなく、️「その動きが出来る為の前段階の身体の動きが経験できていない、出来そうと思えるイメージが描けていない」だけだと捉えるのが安田式です。何かの運動が上手く行かない子は、その動きにつながる前段階の遊びが足りないだけです。

私たちがすることは、遊具を並べて、ぶらさがったり、足をグーパーと動かしたりする「遊び」をみんなで一斉に楽しみます。すると、自然とぶら下がる事が心地よくなり、回りたくなった時には、自然と「ぶら下がる力」「足を引き付ける力」が身に付いているので、「この子はもう逆上がりできるな」と思ったタイミングで、挑戦させるのです。すると、いとも簡単に回れるので、逆上がりや鉄棒に熱中していくのです。

また、この指導はいじめ問題の解決にも繋がります。仲間と共に身体を動かす遊びの中で、共感性を育めるので、当たり前のように友達を応援する雰囲気が生まれます。また、健全な体に健全な精神が宿る、という考えもあり、しっかり身体を動かして頭がすっきりするので、子ども達も前向きな気持ちになれるんだと思います。

運動が楽しい、楽しいから熱中する、熱中するから脳が育つ、最終的に子どもがイキイキと成長する、といったサイクルが生み出せるのです。
 

 

うちの社員には、抜群の競争力を持った商品で、日本中で活躍してほしい

–吉川社長は、入社する社員にどのような力を求めますか?
安田式メソッドは、世界唯一の理論で、競争力は非常に優れていますが、まだまだ世間に認知されていない商品です。この商品を持ってして「日本の教育を変えてみたい」という気持ちを持った人に会いたいなと思います。

1995年から、安田式メソッドの販売を行い、今では2600施設、全国47都道府県すべてに設置園が存在するまでに成長しました。しかし、2600施設というのは実は、日本の幼児教育施設のたった8%にしか過ぎません。しかも、残りの92%は断られた訳ではなく、まだ安田式メソッドを知らないだけ。我々の遊具を設置した施設の方は、必ず設置して良かったと仰ってくれます。

積み上げてきた自信と実績がありますので、「子どもが好き」「身体を動かすことが好き」という方だけでなく、「学校の先生以外の仕事でも、子どもや教育を変えられる」と信じてくれる仲間が欲しいと思います。

–御社が社員に提供できるスキルや価値観、考え方はございますか?
どんな子どもも運動大好きにする方法を理論と実践で丁寧に伝えます。結果、お客様に「先生」と呼ばれるのが一番象徴しているのではないでしょうか。私たちはただの遊具の営業マンや設置業者ではありません。

お届けした遊具を活用してキチンと子ども達が成長しないと本末転倒なので、職員の皆さまへの研修や、何百人の保護者の方に講演をすることもあります。すると、その指導の結果、目に見えて子どもたちの様子が変わるので、子どもたちからも、職員の方々からも「○○さん」ではなく、「○○先生」と呼ばれるようになるのです。

かつて幼稚園に教材教具だけを売っていたころは「そこ置いといて」と言われるのが当たり前だと思っていました。しかし今の仕事を始めてからは、私たちの商品にお客様が期待を寄せてくれることを感じられます。逆にお客様から「次は何を買えばいいですか」と尋ねられることもあるので、営業冥利に尽きる仕事だなと感じますよ。

その期待に応えられるよう、スタッフは日々研鑽を積んでくれています。他業種から転職したスタッフが、先生と呼ばれているのを聞くと、頼もしく、とても嬉しくなります。
 

 

子どもが変われば、世界が変わる。若い人こそ、世のため人のためになる仕事に就いて欲しい

–今後どんな会社にされたいと思われていますか?
「子どもが変われば、国が変わり、世界が変えられる」というビジョンを実現したいと思っています。

いま、欧米では「ディベート教育」が注目されているのですが、この教育方法を用いた結果、イギリスでは貧困層の子どもでも一流大学に入れたり、国が変わり始めていると言います。私は、安田式メソッドにもそれだけの可能性があると信じています。

実際に、これまでは地方テレビ局の取材しか来なかったのが、最近、全国放送の問い合わせが来たり、東大や京大の一流の研究者との交流も始まっています。

–これからどんな事業やサービスを展開されていく予定ですか?
まずは、動画を用いて、全国の先生方に、安田式体育指導法をよりお伝えしやすい環境を作りたいということでインターネット学習サイトを開設予定です。このサイトは同時に、もう1つの狙いとして、社内研修にも使えるのではないかと考えています。

スタッフ自身が体育指導を先生方にも研修出来るレベルを目指す必要があるので、今まで当社は社員が独り立ちするまでに、どうしても3年近くかかっていました。しかし、動画を使えば、研修時間を短縮できるので、自学自習の環境が作れると思います。

–最後に、これから就活を迎える大学生にメッセージをお願いします。
20~30代という、一生で1度しかない、1番キラキラした時代を、どんな仕事をして過ごすのかは非常に重要だと思います。私の場合は「矛盾のない仕事をしたい」と決断し、「子ども」「教育」という軸で仕事に就けたことが、本当に良かったなと感じます。

本当の意味で、人のために尽くせて、社会貢献性のある仕事に就くことが出来れば、月曜日に「仕事に行きたくない」という気持ちは無くせるのではないでしょうか。そんな仕事であれば、同じ志を抱き共に頑張れる仲間や先輩にも恵まれます。ネームバリューや給与待遇のみではなく、心からやりたいと思えて、入りたいと思える会社に入社し、若い人こそ良い仕事をして欲しいなと思います。
 
 

【告知】エール株式会社に直接会える特別イベント開催!

12/5(火)18:00~@京都・烏丸御池の弊社Dekiroom[デキルーム]にて、
エール株式会社ご登壇の業界研究セミナーを開催します!

《教育×メーカー》という業界研究を軸に、
記事に出てきた話をより詳しく聞き、実際に体感できるチャンスです!
興味のある方はぜひ、お越しくださいませ!

▽イベントページ詳細はコチラ
(Facebook)
https://www.facebook.com/events/125718894810312/?ti=cl
(HP)
https://jmty.jp/kyoto/eve-work/article-7im3y

この記事を書いた人

投稿記事はこちら

kodai nishino

インターン生/同志社大学文化情報学部
2017年1月、長期インターンシップ生として、株式会社インデンに入社。自社の飲食店のリサーチ分析業務と、インバウンド事業部での企画戦略立案業務を兼任。現在は、人事・採用ブランドマネジメント事業部で、クライアント企業の学生向けPR支援を行う。

関連関連記事

新着新着記事