「仕事がつらくてつらくて仕方がない。」 「俺はこんなはずじゃなかった。」
社会には日々このような愚痴を漏らしながら働き続ける人がいます。これはいったい何故なのでしょうか?自分が求める条件が全てそろった企業に入ることができた人でさえ、入社後にこのような問題に直面してしまうのです。
「自分は何がしたいのかわからなかったから、とりあえず内定をもらった企業に入った」と言って入社した人たちの多くは、自分の興味・関心があることと自分に与えられた仕事とのギャップに苦しみ、我慢ができなくなった瞬間に転職を志すようになるのだそうです。
この問題は一見すれば他人事かもしれませんが、実は誰にでも起こりうることなのです。
では、就活世代の大学生はどうすればよいのか?
面接で嘘偽りなく自分の意志を伝えるためにはどうすればよいのか?
今回は、この問題に対する1つのアドバイスとして「自己分析」について述べ、2つの切り口から解説することにします。
【1】自己認知:自分の過去と限界まで向き合ってみる。
「いい会社の内定が欲しい。」 「自分に合った会社に入りたい。」
就活を始めた当初の大半の学生が考えることではないでしょうか?
しかし、この「いい会社」や「自分に合った」という言葉の定義、なんだかフワッとしていませんか?
結論から言ってしまえば、
自分を理解できていない人が、自分に合う企業なんか見つけられるはずがありません。
今の自分を形作ってきたものを馬鹿丁寧に1つ1つ追っていく「自己認知」をすることで、少しずつですが自分という人間がどういう価値観のもとで生きてきたのかということがざっくりと見えてきます。
例えば、あなたが寝食を忘れるくらいに学生団体やサークルでの活動に力を注いできた人だったとしましょう。なぜ自分がその団体に参加し、なぜその団体で自分がそこまで全力になれたのかを説明することができますか?
もしそれが「楽しそうだったから。やりがいがあったから」などの一言で終わってしまうようなら、もう少し自分について考えてみる必要があるように思います。自分の行動の動機を形成する価値観がどこから生まれたのかを丁寧に追っていくことです。
自己認知は、主に2つのプロセスに分解できます。
1.物心ついた頃から現在までの間に自分が経験してきたことを洗い出す
この方法は、多くの自己分析本にも書いてあるかと思います。ここでのポイントは、頭で思い浮かべて終わりにするのではなく、紙に書き起こしたりしてできる限り可視化するということです。文字に書き起こすことで、自分の思考をシンプルなものに洗練させることができるとも言われています。
2.個々の経験の中でその行動をとった理由と背景を分析する
当初は無意識に行動していたように感じるかもしれませんが、今の自分から再度振り返ってみると「あの時の自分はこんな気持ちを持っていたから行動したのだな」と気付けることがあります。この行動に対する動機の深掘りこそが最も重要です。
この一連の自己認知は、個人によってはトラウマティックな経験を掘り出してしまうこともあるかもしれません。しかし、可能な限りその経験からも逃げずに向き合ってほしいです。自分の価値観形成の根源は案外そうしたネガティブな経験の中に隠れているものなのです。
就活で言えば面接の場で、「私は過去にAという体験があったことからBという価値観が形成されて、そしてその価値観に基づいてCという決断をし、そこで全力で頑張ることができたと思います」というように過去の体験に紐づけて話すことができれば説得力は間違いなく増してきます。
【2】他己分析:自分の目線と他者の目線の「ズレ」を認識する。
ある程度自分のことが自分でわかってきたら、今度は他己分析を行います。
自己認知によって理解している自分はあくまで「自分目線からの自分」でしかないため、自己認知の際も、自分が大事にしている価値観などによって何らかのバイアスがかかっているおそれがあります。
その主観的な視点のズレを修正するために他己分析は効果的なのです。
要するに、「企業から見たときにあなたはどういう人材に見えているのか」をはっきりさせる方法です。
これは企業の人事の方や面接官・キャリアアドバイザーなど、自分のことをよく知らない人に手伝ってもらう方がうまくいきます。気の知れた友人だと、無意識にあなたの価値観に合わせた他己分析をしてしまい、新しい視点を見出せないかもしれないからです。
他己分析の方法は、自己認知と全く同じ方法を用いて大丈夫です。ただ、今度は相手からの質問に答える形で分析を進めていきます。
すると面白いことに、自分が考えていたものとは異なる結果が見られたりします。
僕は自己認知はかなり緻密にしていたので、自分のことはそれなりに理解しているつもりでしたが、それでも他己分析をすると自分が気付いていない考え方を持っていることに気付くことができたのです。
これができると自分と相手の目線のズレはかなり補正され、面接の場で「私はこういう人間です」と言った時に、自分が認識している自分の人物像がそのまま相手に誤解なく伝わる確率はかなり高くなります。
自分を社会の中にどう位置づけるか、ということ。
ここまで自己分析をして自分を知ることができれば、
「自分はこういう仕事をするのが好きかもしれない」とか「自分はこういうことだけは絶対にやりたくないな」といったことがなんとなくわかってきます。
例えば、この時期になってくるとそろそろ自分が参加する春・夏のインターンシップを決めるために、色々な会社の企業説明会や合同説明会などに足を運ぶことになるかと思います。そこで初めて自分と社会とを結びつけていくことになります。
こうして様々な社会を知り、様々な社会人とお話を重ねる中で、かなり具体的なレベルまで「自分のやりたいこと」が見えてくる人もいれば、やりたいことが見つからないままモヤモヤしてしまう人もいます。これはどっちか正解だ、とかいう話ではありません。
とはいえ、やりたいことが見つからないために業界や企業をうまく決めきれない人も出てくるでしょう。このパターンに陥った時に考えられる解決策の1つとして、
「What(何を)ではなく、How(どうやって)で企業を選ぶ」
が挙げられるかと思います。かなり抽象的な言い方ですが、要は「やりたい仕事で選ぶのではなく、自分が楽しいと思える働き方ができる環境で企業を選ぶ」ということです。この選び方も、自分の興味・関心が自分で理解できていないとできないことなので、やはりまずは自分を知ることから始めたほうが良いです。
その企業を選んだ段階で、「頭」と「体」が両方納得している状態であれば、入社後にミスマッチが起こる確率は限りなく減らせるのではないかと僕は考えています。
自分にとって納得感ある仕事観を持つことができれば、お互いにとってミスマッチなく就職ができることに繋がります。この方法が皆さんにとって最適なファーストキャリアを選ぶ手段の1つとして参考になることを願っています。