早慶上智、旧帝大、MARCH、関関同立……。いわゆる「高学歴」とよばれる大学に通っている人たちの中でこのような思い込みをしてしまっている人はいませんか?
「自分はそこそこデキるやつだ。」
こう思い込んでしまうことは別に悪いことではありません。問題なのは、
「自分はそこそこデキるやつだ。」と思い込んだまま、社会に出て打ちのめされて立ち直れなくなることです。
今回の長期インターン生OB・OGインタビュー第6弾では、「学生の優秀さ」と「社会人の優秀さ」というものがどれほど違うのか、ということをインデン元インターン生の山川奈々さんに語っていただきました。
同志社大学文学部4年生 インターン生OG(2015年5月入社)
大学3年生の5月から、インデンに長期インターン生として9カ月間参画。
インデンが運営する菓子店「六角庵」の売上向上のための施策づくりを主に担当。
先輩の顔つきが変わったのを見て、「普通」の大学生をやめようと思った。
-よろしくお願いします。まずは長期インターンに参加するまでの経緯を教えてもらえますか?
大学では、特に変わったことは何1つやっていませんでしたね。ただ普通に大学の軽音サークルに入って友達や先輩と楽しく騒いで、あとアルバイトも普通にやってて、お金がたまったら自分の好きなバンドのライブに行く、みたいな。大学3年生の初めの頃までは、将来の為になることなんてほとんどやってなかったです。正直、勉強もほどほどにやったかなーくらいでした(笑)
ただ、あんなに仲の良かった先輩がシャキッとリクルートスーツを着て、慌てて就活を始める姿を見たときはさすがの私も思うところはありました。このまま先輩たちと同じように就活の時期になってから、ぬるっと就活を始めていくことに危機感を覚えたというか、それって怖いなと思うようになって。
-確かに仲の良い先輩が急に顔つき変えて就活する姿は、少し抵抗あるかもしれませんね…….。
はい。だから私もやらなきゃって思ったけど、どうしても自分が就活するイメージがわきませんでした……。なんでイメージできないのか考えたときに、「そもそも自分は社会で働いたことないじゃん!」って気付いたんです。
そこで働くことを理解するために、インターンシップに参加してみようと思いました。インターンシップは短期のものが一般的で、1日だけのものから10日間くらいのものまでたくさんありました。ただ、私にとっては短期のものはどれもあまり魅力的ではなかったですね。
私の場合、「社会で働くことを知ること」が目的だったので、どう考えても長期の方がよかったわけです。だから会社にどっぷり浸かりながら、自分がどんな感じで働いていくのかを理解できそうな場所を探していました。当時、関西で長期インターンやっているところはそれほどなく、その中でも「社会人と同じ裁量権で働ける」ことを強調していたインデンに応募したのがはじまりですね。
まあ、ここで大学4年間の中で1番大きな壁にぶち当たることになるんですが……。
ビジネスの洗礼を受けて、自分があまりに無力だったことを知る。
-なるほど。それではまず1番メインで取り組んだことを教えてもらえますか?
私が1番力を入れたのは、六角庵(※1)の売上向上のためにいろいろ施策を考えていたことですね。このときの経験は一番辛かったといっても過言ではないかもしれません。ビジネスの厳しさを痛感しました。
京みやげの「からめる焼」が主力商品となっている。
-現在、六角庵の売上アップやマーケティングは社員の方が専任で担当されていますよね?
そうなんです。だから本当に学生と社会人との距離感なんてものはなかったんだな、と思います。この仕事は私が入社して3カ月くらい経ったころに社長から直々に依頼されて、まさにビジネスそのものでした。
私は店舗(上画像は実際の六角庵店舗)で接客を担当する社員さんと一緒になって、色々な施策を提案しては実行してみました。たとえば外国人のお客様が来られた場合であっても、スムーズに応対ができるようにスマイルコール(※2)を導入したり、多言語に対応したポップ(紙に商品名と価格、またはキャッチコピーや説明文、イラストだけを描いたもの)を作って店舗に置いてみたり、お客様に六角庵がお菓子屋さんであることを認知してもらうために店舗外に置いてあるディスプレイの位置を変えてみたり……。
自分から案を出したり、周りの方からアドバイスをいただいたりしながら考えてみましたが、なかなか売上は上がりませんでした。
でも当然といえば当然なわけです。商売というものを何も知らない学生が1人でいくつかアイデアを出したからといってすぐに売上に直結するほどビジネスは甘くありません。
そもそも私は、大学生活において周りを率先して色々自分から新しく策を練って考えたりした経験があまりなかったのです。サークルにせよアルバイトにせよ、学生生活の中では「先輩についていけば」「決められたルールに従えば」なんとかなるような場面がほとんどでしたから。
そんな私がいきなり社会に放り込まれて、ビジネスの場で成果を求められたのです。これは本当に悩みに悩んだ。
1から自分で新しいことを考えて行動していくスタイルは果たして自分に合っているのか、と考えたこともありました。でもそんなことを考えている暇もない。正解がない中でもとにかくやるしかありませんでした。
今までの勉強や部活動ってよほどその方向性が間違っていなければ、頑張ったら頑張った分だけその結果は保証されますよね。けれども、ビジネスにおいてはそういう必勝パターンのようなものは存在しません。
結局、このときは自分で結果を残せず悔しい思いをしましたが、ビジネスの難しさを改めて痛感できた貴重な経験でした。
自分はそれなりにデキるやつだという自負も、粉々になった。
-六角庵の他にどのような業務を担当されていたのですか?
結構幅広くやらせていただきました。スマイルコールの既存顧客の名簿の管理や利用促進のためのポップ作り、また自社のインバウンド情報のメルマガの校正や中国語版フリーペーパーの立ち上げなど、いろいろ担当しました。ただ、私にとってはどれもハード過ぎて毎回悩みましたね。
-山川さんからはポジティブそうな印象を受けますが、実際は違うのですか?
私は基本的には悩まないタイプなんですよ。周りに相談するなんてこともほとんどなかったし、自分のことは自分で考えたらいいと思ってた。そんな考え方でも、今まで生きてきた中で怒られることもそんなになかったかなぁ。
さらに私に関して言えば、そもそも責任感があまりない人間でした。締切なんかは決まってギリギリなタイプですし(笑)そんな人がいきなりビジネスの場に飛び込んじゃったもんだから、最初は本当に大変だった。大学まではこんな感じの適当さでも、やるときさえちょっと頑張ったらなんとかなってきたんです。
社交性はある方なので、どのコミュニティに入っても人間関係もうまくやってこれた。勉強も要領をつかんだらそこそこできたし、アルバイトも慣れればどんなことにも柔軟に対応できる方でした。そんな感じですべてそこそこできていたから、どうしても心のどこかで思い込んじゃうわけです。
「自分はそこそこデキるやつだ」と。
-ところが、長期インターンをやってみたらできないことだらけだったと。
たとえばスマイルコールの営業先のリストアップをしていたときのことです。1カ月で〇件リストアップするという目標が課せられて、当時の私はとにかく数をリストアップすればOKだと思っていました。で、これは私の悪い癖なのですが、そのタスクを納期ギリギリまでため込んでしまって1夜漬けでやる羽目になりました。
でもやれと言われていた数はできたからまあOKかなと思っていたら、社員さんから指摘の嵐。「とりあえずこのくらいやったらいいか」という甘えや妥協が許される余地などどこにもないわけです。
私の目線から見ればそれは合格なのかもしれませんが、相手にとってそれが不合格なものであれば意味がない。むしろ相手にとっていい加減なものを出してしまうと迷惑につながってしまいます。これを大学生のうちに気付けたのは本当に価値があると思います。
そこから私は少しずつですけど、「当事者意識」を持つようになりました。それ以降に任されたリストアップ業務は、「絶対に1週間に40件ずつやろう!」って自分に言い聞かせて、周りの人のこともちゃんと考えてやりました。その際も、しっかり自分がやる仕事を事前に報告するようにしていました。
そしたら上司に褒められたんですよ!ほんのちょっとですけど!(笑) 周りから見れば本当にちょっと褒められただけなんですけど、私にとってはこの経験が自分の大きな成長につながったと思っています。
私は社会人0年目で挫折できたから、1年目ではへこたれずに頑張れる。
-インターン経験を経て、改めて思うことはありますか?
社会人の優秀さは頭の良さではない、ということですね。いわゆる「勉強がよくできる学生」が社会に出て同じように仕事がよくできるかといったら、そんなことはないです。
私が思うに、社会人において優秀と言える基準は、「まず自分との約束を守ることができるか」です。周りを巻き込みながら仕事を行っていく中で、自分がまず結果を出す。そのためには、自分で決めた約束を絶対に守ること。そうしないと仕事はどんどん先延ばしになってしまって、絶対にうまくいかなくなる。
-その言葉から山川さん自身、相当成長されたのだなとお察しします!
本当に根っこの部分から、自分のプライドが崩されたので、一旦ダメな自分を受け入れることができました。すると、自分のダメなところがいろいろ見えてきます。こんな失敗体験、受け身な姿勢で大学にいただけじゃ絶対に経験できなかった。
学生時代にこういう挫折をすることがどれほど価値があるのかは、私が社会人1年目になったときに改めて実感することになると思います。
-ありがとうございます!最後に、Dekiroute[デキルート]読者に一言お願いします!
長期インターンに飛び込んだばかりの頃の私みたいに、将来に漠然とした不安がある人こそ勇気をもってビジネスの世界に飛び込んでみてほしいなと思います!なんとなくもやもやしながら未来の自分を変えたいと思っている人なら、間違いなくその不安や曖昧さは自信に変わるはずです。最初のうちはもれなく挫折もついてくるとは思いますが(笑)
ただ、私は学生のうちに失敗しておいた方がいいと思います。
人って、失敗しないうちはなかなか他人の話を聞き入れないものですから。こういう体験を学生のうちにせず社会に出て、そこで挫折してしまったらたぶん立ち直れない気がします。
学生時代に挫折して、精神的にタフな人間になったという自信をつける。その自信を持って、さらに社会人の優秀さの基準を理解した上で社会人1年目を迎える。
そうすることで、早いうちから社会人として輝いていけるような気がします!
「失敗を素直に受け止め、自分に課した約束を守る」ことが社会人の優秀さである。
話を終えて、山川さんからはやはり「優秀」という印象を受けました。ただそれよりも、僕はその奥になにかどっしりとした自信のようなものを感じました。
確かに長期インターンはつらいことも多いのかもしれません。僕も何回も心が折れています。。。それでも続けられるのは、やっぱり学生時代に社会人と働くことで得られる価値が大きいからだと思います。
先輩に勇気づけられたので、僕もまた明日から頑張っていきます!
山川さん、本当にありがとうございました!